今では夏の美白は当たり前だが、私は二十五年以上前から、「焼かない」派だ。中学生のころから平安古典にはまっていて、高校生になるころには、身も心も平安貴族になろうと、『古今和歌集』をひと晩に三首ずつ暗記したり、つづけ字をマスターしようと書道教室に通ったり(いきなりつづけ字は教えてはもらえなかったが)、何より「色白」を目指し、帽子と日焼け止めを欠かさなかった。平安美人の条件は、歌と書と色の白さだったからである。地面につくほどの長い黒髪というのもあるが、さすがにそこまで伸ばすのは生活に支障があるので断念した。お歯黒もしなかったし(というかできない)、眉を抜いて整えることもしなかった。当時の私は、自分のできる範囲で、平安貴族に近づこうと努力していた。なかでもいちばん努力せずにできることは、日に焼けないことだったのである。絵巻物でも、貴族はひと目でわかる。男女共に色が白く、女は髪をまとめずに長いまま垂髪にしている。高貴な女は絵巻物ではほとんど全員、美人に描かれていると言ってもいい。
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