若い男にいちばん似合う格好は、裸だ。もしくは白いTシャツにジーンズ。彼らは服で自分を飾る必要がないほど輝いている。そんな彼らが社会へ出ようとするとき、全然似合わないスーツを着るというのは、残酷なくらい象徴的だ。今まで似合っていた服を脱ぎ捨て、似合わぬスーツを着て、企業への忠誠心を示すため、これから頑張ります、という言葉よりもまず、うぶな姿でアピールする。だから、就職活動中の学生はスーツが似合わない。それが正しい姿だ。これが三〇過ぎた会社員のようにしっくりいっていたら、気味が悪いし、切実さが伝わってこない。誰でも、ルーティーンでスーツを着る時期を経て、ビジネススーツが様になっていく。その後いろいろな冒険ができるようになるのは、長い基礎固めを終えた五〇過ぎからだと考えたほうがいい。どんなにお金持ちであろうとも、スタイルがよかろうとも、女性にモテようとも、それは同じである。「スーツは、一日にして似合わず」例外はない男の法則だ。視点を変えれば、スーツほど平等な服はないともいえる。五〇過ぎの男で、よりよく着ようという意志と実行力さえあれば、誰でも今以上に魅力的になることができるのである。格差社会などといわれ、社会の歪みが叫ばれている今、この法則はオーバー五〇世代に大いなる希望をもたらすだろう。
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