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常に一人に的を絞って判断しなさい

私が世話をした中で一番困ったのは、自分に好きなひとがあるのに、他に縁談があるのに、もう一方の縁談に首を突っ込んで、両方を比べられたときである。実は自分の恥をさらして申し訳ないが、私がその実行者であった。夫から申し込まれると、急いで見合いを幾つかして、夫と比べたのである。しかも、夫に見合いの相手の写真と身上書を見せ「あなたとどちらがいいでしょう」などと本気で聞いたのだから、今から思うと、何たる無神経、何たる無礼と思ってしまう。それが、真面目なのだからなお悪い。私は学校の成績はよかったけれど、成績のよいことと、人間そのものができているかいないかはちがう。今思えば、私は傲慢であり、無知であり、うぬぼれていて、相手の気持ちを思いやることができなかったのである。四人目の見合いをしようとして、夫の許に相談にゆくと彼は言った。「僕よりよい話がたくさんあるようですから、僕はあきらめて引き下がります」そのとき、やっと私は目が覚めたのである。このひとはうぬぼれやの私に耐えて、我慢して、待っていてくれたのだと。申し訳ないことをしたと。そして、四人目を断り、私は夫に決めた。恋愛も見合いも、結婚が前提ならば、いくら緊張してもし過ぎということはない。恋愛は遊びではなく、見合いは百貨店で買物をするのとはちがう。一にも真剣、二にも真剣の勝負でありたい。似た話がつい最近あった。優秀な青年を、私が一人の娘に紹介して見合いしてもらった。その結果は、駄目になった。理由は、と言ったら、彼が「私は申し上げないと約束しました」。でも参考になるからと聞くと、相手の娘は言ったという。「私は好きなひとがおります。親は反対しています。親の顔を立てるために見合いしました。あなたと結婚する意志はありません」。これは私の場合より更に悪質の女だと思う。自分に好きなひとがいたら親に言えばよい。京都の娘であった。女子大も京都である。そして東京の男をわざわざ京都まで見合いに行かせて、この話は初めからないと思って下さいとはひどい。その青年は別のひとと結婚し、立派な職場で、立派な仕事をしている。その後に、京都の娘の好きなひとというのは、妻子ある中年の男と聞いた。その娘が今どうなっているかは知らない。これも最近の話である。やはり優秀な青年を私が一人紹介した。彼女は言った。今私はつき合おうと思った男がいるから、ちょっと待って下さい。ところでつき合ったら、そっちから断られた。その前に私は青年の方に断ったので、この話もまとまらなかった。彼女の失敗は、つき合いたい相手がいるなら、写真や身上書などよこさなければよかったことである。見合い写真を渡すにも、恋愛相手とつき合うにも、一本に整理してからのことである。

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